さいたま市立大宮図書館所蔵
2024/10/20 大宮図書館より借入
2024/10/31 読書開始
2024/11/03 読了
2024/11/04 大宮図書館へ返却予定
そもそもアレルギーとは何か。
それは、免疫を介した、無害な抗原に対する有害な過敏反応であり、その抗原は、免疫反応を活性化させるあらゆる毒素や異物だと定義される。(P.26)
本著では、アレルギーがなぜ起こるのか、そしてそれに対する治療はどうなっているのかを膨大な取材をしながら最新の状況についてそれこそ「丁寧に丁寧に」教えてくれている。そして、その挙句の果てに……。
過去2世紀にわたるアレルギーの劇的増加の背景にありうる原因をここまで探求してきて、私たちは何を学んだだろう?私たちは、免疫系の遺伝的特徴が重大な役割を果たすものの、誰がアレルギー性疾患を発症するかを遺伝によって十分に説明できるわけでもなければ予測できるわけでもないことを知った。私たちは、自分たちが暮らす環境――私たちを取り囲む天然・人工の世界――がこの問題に最も確実に寄与しているものの、これもまた唯一の原因ではないことを見てきた。
そして、私たちの習慣と行動は全体的な健康と免疫機能に大きく関わってくるが、これらもやはり、免疫系に起きている出来事を完全に説明してくれない。私たちに起きているのは、過去200年にわたって私たちがやり方を変えてきた一切の物事と、それらが環境と私たち自身の生態に及ぼしてきた作用とによる1つの結果だ。ただそれだけの単純な話であり、それほどの複雑な話でもある。(P.283)
疑わしい原因や有効とみられる治療はあるものの、決め手はないのである。
私自身もアトピーというほどではないが、気がつくと体が痒い。湿疹も時々出るのでその都度皮膚科で薬をもらって塗布したりしているが医師に聞いても要領を得ないし大枚はたいて血液検査をしてみても原因がよくわからない。完治しない。
唯一の原因や対策はないのである。人間自身が膨大な細菌と共存している存在であり、地球の生態系の一部であるのだから、その絶妙なバランスを崩し続ければ何らかの失調は避けられまい。
過去200年にわたって私たちが行ってきたあらゆることが(あの新たなアルファガルアレルギーの例が示しているように)私たちを ゆっくりと、気づかないほどわずかずつ、絶えず 掻き乱しており、アレルギーを抱える人々は環境変化という炭鉱におけるカナリアのようである。アレルギー患者は今でこそ人より苦しんでいるかもしれないが、彼らの姿はいずれ私たち全員に訪れることの前兆なのだ。各種のアレルギーは、あるアレルギー専門医の言葉を引用すると、「気候変動が健康へ与える影響の見本」である。(P.463)
そして、
私たちは自らを掻き乱してまさに死に至らせようとしている。問題は、それに関して私たちがこれから何をしていくかだ。答えは次の2つのいずれかになる。(A)特に違ったことはせず、成り行きを見つめる。私たちの免疫系が21世紀の暮らしに圧倒され、かつその暮らしに見合った訓練を受けていない状態が続くため、アレルギーは悪化していく。(B)自分たちがアレルギー蔓延の要因の大部分を引き起こしていることを認識し、日々の暮らし方を集団として考え直す。その結果、より持続可能な生き方へと移行し、私たちの周囲の環境に対する関係性を丸ごと変えていく。(P.463)
(B)の道を歩んでほしいとは思うが、これまでがこれまでだけに、また何か「とんちんかんな事」をしでかしてさらに悪くするような予感もしますな。多少痒くても、アナフィラキシーショックで死んじゃう人がたまに出ても我慢して折り合いつけていく方が無難ではないだろうか。
それにしても、著者の力が入りすぎか、500頁にも及ぶ大著である。この内容にしては冗長すぎる、もっとコンパクトになあ。他にも読まなければならない本がいっぱいあるんだからさ。
ああ、なんか痒くなってきたぞ!もう!