さいたま市立北図書館所蔵
2024/11/27 大宮図書館より借入
2024/12/04 読書開始
2024/12/07 読了
2024/12/09 大宮図書館へ返却予定
史上最大の作戦、ノルマンディ上陸作戦の戦記である。ただし、今までさんざん書かれ映画にもされた米英独からの視点だけではなく、六ヵ国軍からの視点であるところが斬新。
米軍空挺部隊の混乱きわまる降下(第2章…私は絶対空挺部隊に召集されたら兵役拒否する 笑)に始まり、
●「ジュノー海岸」上陸を担ったカナダ軍(第3章…フランス系カナダ人部隊の「凱旋」でもある)
●カーン攻略に向かった強兵スコットランド師団(第4章)
●頑強独軍に「グッドウッド作戦」で臨んだ英軍(第5章)
●絶望的な状況の中で乾坤一擲の「リュティヒ作戦」に打って出る独軍(第6章)
●ワルシャワから遠く離れた「ファレーズ・ポケット」で独軍との包囲戦に遭遇するポーランド軍(第7章…同じ頃ワルシャワの国内軍はソ連赤軍に見捨てられ独軍によって殲滅される)
●そしてパリ解放へ怒涛の進軍をするドゥ・ゴール将軍麾下の自由フランス軍(第8章)
といった戦局の諸相が書かれ、ノルマンディ戦が第二次大戦において占めた役割を明かしていく。
なかなか、読みごたえがある好著だとは思うが、饒舌すぎて困った。一語一語丁寧に訳しているのだと思うがとにかく読みづらいのだ(多分キーガンの書きっぷりに癖があるのだろう)。読了まで手こずった。冒頭の訳を以下掲出する。
私にとっては楽しい戦争だった。こんなことは文字にすべきではないし、口にしてもいけない。ましてや、ロンドン界隈の高級バーをこの三〇年間、片っ端から飲み歩いて浮かれてきたようなものだったと、得意げに口走るなどもってのほかである。それでも私の場合は、そのとおりなのだ。楽しい戦争といっても、作業域の安全な場所にいる戦士もどきにとっての楽しい戦争ではない。そうではなく、一人の少年、つまりロンドンで初のサイレン音が聞こえたときにイングランド西部の緑豊かな田舎に連れていかれ、最後の砲弾のこだまが世界の安堵のため息の中にかき消された一九四五年八月まで、そこに留め置かれた少年にとっての楽しい戦争だった。(P.25)
いいかい、キーガン先生、戦記というのはね、戦記というのは、地図を差し挟まなくてもよいほど簡潔かつ明瞭にしてかつ名文であるべきなのですよ。